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[読了]夜中の薔薇

夜中の薔薇
夜中の薔薇 (講談社文庫)夜中の薔薇 (講談社文庫)
(1984/01/09)
向田 邦子

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人の心を動かす文章とはこういうことかと思った。
向田邦子の「夜中の薔薇」をよんだ感想である。

そもそも私は、これだけ沢山ブログやホームページに文章を書いているだけあって、書くのは好きだし、本を読むのも大好き。
それでも、最近、仕事上で他人の書く文章に手を入れる立場になって急に自分の書く文章に自信がなくなってきた。
なので、「人の心を動かす文章術」なんていう本を借りて読んでみたのだ。
「人の心を動かす…」、大変為になることが多く、その感想を以前書いたのだけど、その本の中で良い文章として数多く取り上げられていたのがこの向田邦子の「夜中の薔薇」というエッセイ集からの抜粋であった。そこで、SF・推理小説読みの私が、普段だったらまず読まないジャンルの本だけど図書館から取り寄せて読んでみたというわけだ。

読み始めてすぐに気づく、えび茶色の上質なベルベットのような向田邦子の文。
最初は「人の心を動かす文章術」で紹介されていたテクニックの分析などをしながら読んでいたのに、途中でエッセイ自体に惹かれ、テクニック分析などそっちのけでのめり込んで読んでしまった。
あたかも、優れた音楽家の演奏を聴くとき、最初は音楽家のテクニックや曲の構成・解釈など分析していたのに、結局は音の波に翻弄され、曲の分析などどこへやら、演奏家のつむぎ出す世界へ漂流していってしまうように。

昭和4年生まれ、私の母より年上の彼女が、ちょうど私が生まれた頃に書いた文章なのに、微塵も古さを感じさせず、スキーに熱を上げ、手軽で美味しい料理で友人達をもてなし、アマゾンに旅行する。そして、そこに織り交ぜられる、ほかの人には出来ない着眼点と人間への洞察。これを書いた頃、彼女はちょうど今の私と同じ40代、ただ感嘆するばかり。
「人の心を動かす文章」とはこういうことか、と得心がいったが、自分にはまぁ無理だろうと思うばかり。
せいぜいがマネをしてみようとしても、出来の悪い贋作ようになってしまい、がっかり。



***備忘録***

○Aを慰めるためにBを傷つけてしまう。私はよくこういった失敗をする。
原因は簡単で、つまりは不注意と思いやりに欠けているのである。そのたびに人を傷つけ、自分も自己嫌悪と後悔で傷ついてきた。

○言葉で人を傷つけてしまう人間というものは、概して自惚れの強い人間が多いので、得てして相手の痛みに気づかぬことが多いのではないだろうか。それを思うと嫌になってくる。

○どんな毎日にも、生きている限り「無駄」はないと思います。「焦り」「後悔」も、人間の貴重な栄養です。いつの日かそれが、「無駄」にならず「こやし」になる日が、「あか」にならず「こく」になる日が、必ずあると思います。真剣に暮らしてさえいれば-です。

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コメント

備忘録は、我もと思うところが多々あり、良いことに気がつきました。

赤影は技術系なので、専ら文章は技術文書ばかりで、
この技術文書にもルールがありまして、語尾に「ます。「した。」を
つけないのが基本のため、まあ何とも素気ない文章になります。

Re: タイトルなし
赤影さん>

私も理系なんですが、何故か仕事は文章やパワーポイントで表現することになってしまっています。まぁ、本当は内容が問題なんですが、どんなに素晴らしい内容も表現次第で誰も読んでくれないような代物にもなってしまいますので、最近は特に表現や見た目にこだわるようになってきてしまいました。

どちらかというと今やってる仕事は技術系の人が書く文書を普通の人にもわかりやすいように翻訳してるのに近いかも。
英語の勉強ブログの時から拝読しています。いろいろな事に挑戦
なさっていて凄いです。
最近、英語のばかりよんでいるのですが、須賀敦子の全集をあらためて
読んで日本語で表現するということの意味を考えさせられました。
向田邦子の随筆がお好きでしたら、おすすめです。
Re: タイトルなし
英語→簿記→自転車と来てますが、ずっと読んでてくれてるなんて嬉しいです!

須賀敦子さんですね。
今度図書館で借りて読んでみます。
特にお勧めのタイトルとかありますか?
1人で勉強しているころ、勉強の方法の記事を参考にして、いつか
kayoさんのような英語力をつけたいなあと思っていました。
自転車は学生時代にランドナーで日本中をツーリングしていました。
いまはクロスバイクにたまに乗っています。

さて須賀敦子は、一作目の「ミラノ霧の風景」が有名です。
翻訳家としても書評家としても優れた仕事をした人だと思います。
「遠い朝の本たち」も好きです。

全くジャンルは違いますが「松本清張の残像」という本を読んで
「昭和史発掘」などの推理小説ではない清張作品も、今後読んで
行きたいなと思ってます。

日本語と英語って読書の仕方が違う感じがしませんか。
母語と外国語という違い以前になにか文章のなりたち、構造が
違うので、日本語の作品を英語で読むと面白いかもしれません。


Re: タイトルなし
> 自転車は学生時代にランドナーで日本中をツーリングしていました。
> いまはクロスバイクにたまに乗っています。

日本中をツーリングってすごいですねぇ!
楽しそう~

> さて須賀敦子は、一作目の「ミラノ霧の風景」が有名です。
> 翻訳家としても書評家としても優れた仕事をした人だと思います。
> 「遠い朝の本たち」も好きです。

ありがとうございます。今度読んでみたいと思います。

> 全くジャンルは違いますが「松本清張の残像」という本を読んで
> 「昭和史発掘」などの推理小説ではない清張作品も、今後読んで
> 行きたいなと思ってます。

ほほ~。松本清張は結構読んだのですが、「昭和史発掘」は読んでないなぁ。
私も読んでみます。その前に「松本清張の残像」を読んだ方がいいのかな?

> 日本語と英語って読書の仕方が違う感じがしませんか。
> 母語と外国語という違い以前になにか文章のなりたち、構造が
> 違うので、日本語の作品を英語で読むと面白いかもしれません。

読書の仕方が違うかどうかは分かりませんが、日本語の作品を英語で読むと面白いかもしれませんね。最近は日本語の本が結構英訳されているようなので探してみよう。

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